わたしの部屋に入ってこないで(さーちゃんの日記)

さーちゃんは何でも欲しがった。ピアノ、大きいくまのぬいぐるみ、それからわたしの顔。さーちゃんはゴミ箱になりたい、とよく言っていた。まーちゃんになれないのなら、ゴミ箱になりたいって言ってた。そんなさーちゃんは大人になった。ヒールを履いて、髪をくるくるにして。欲しい男、すべて手に入れて。わたしとは別人。美人になった。でも、さーちゃんはわたしにはなれなかった。わたしもさーちゃんになれなかった。さーちゃんはバービー人形みたいだった。わたしはリカちゃんのままで、プラスチックの体に幼い精神を閉じ込めたままなのに。

さーちゃんの部屋は特別だった。さーちゃんの好きなぬいぐるみでいっぱいで、お嬢様みたいだった。さーちゃんの部屋には薄汚れた大きなくまのぬいぐるみが、まだおいてあるかな。ぼさぼさの髪のバービー人形が、あるかな。もうそういうの、わすれちゃったかな。わたしの部屋に入ってこないで。押し入れの中は、薄暗い思い出でいっぱいだから。今日もたくさんの思い出に殺される。